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かくざとう を ひとつ

好きなものを好きなだけ。いっつふりーだむ。好きなものほど貶したい貶し愛がデフォ。

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靴を落としたシンデレラ


新入社員の子達とちろっとお話をしてきたわけです。
かわいいなぁ、と正直な感想で。なんていうか、なごむ。
これから痛い目に合うんだ頑張れ、と思いつつも、きっと大丈夫だよと思いながら。
まぁ年下のこはかわいいなぁとかみしめた職場最年少のわたくし。
・・・下の子、かわいい。
残念ながら後輩ができる前に去る予定になりそうですが、まぁそれは良いか。

さてさて続きからこうはいちゃんと約束した柚木先輩@金色のコルダ無印
遅くなったうえに、先輩の出番一瞬なうえに、香穂子ちゃん出てこないっていう。

(日野ちゃん←)先輩←婚約者 のお話です。
誰得って?俺得♡笑
ほぼ両想いだったけれど、なぜかED迎えてない先輩と婚約者の話。



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 セレナーデ、という曲らしい。
 それが、私の聞き出せた唯一の情報だ。

 本当に、ただの偶然だった。私が彼の演奏を聞いたのは。
 いつもの訪問よりは遅い時間、だけれど世間的な逢瀬にはまだ少し早めの時間。彼を驚かせたくて連絡もいれずに訪ねてみた。驚くべきことに彼のご家族が皆出払っている、というのは偶然ではなく調査済みの案件。
 微かな期待にはやる胸を抑え、呼び鈴をならし見慣れたお手伝いに取り次ぎを頼んだ。
 豪華で見事な庭園を横切る間、私は、ただ、淡いときめきに浸り、彼のことばかり考えていた。驚くだろうか?困るだろうか?きっと、少し困ったかおをして私をたしなめて、だけれどいつもの優しい上品な微笑みで私を受け入れてくれるーーー
 思っていた、そう。気持ちはガラスの靴を履いて舞踏会へ向かうシンデレラ。期待と不安。でもやっぱり高鳴る。かつかつとヒールのおとも心なしかるく、心が弾む。

 けれど。
 ふと、耳に響いた。

 その衝撃を、私はなんと表現するのかわからなかった。フルートの音色はもともと細く、さほど強く響くものでは、ない。はずだ。まがりなりにも扱ったことのある楽器だからこそしっている。でもその音は、はっきりと耳に届いた。
 心臓を掴まれるような。いきが、止まる。柔らかい音色とは正反対に。めまいがする。

 3年生になって受験に切り替えてしまって練習も疎かだから、とても貴女には聞かせられないよ。
 初めてあった頃、フルートを聞いてみたいとねだった私に彼はそう、優しく言い含めた。なのに、これは、なんだろう。

 美しい旋律に体が震える。とくとくと鳴る鼓動は、何故だか自分でもわからない。
 足を止めた私へ、お手伝いのひとが訝しげに呼び掛けたので慌てて足を進めたけれど、ふわふわ甘い夢を見ていた気持ちはあっという間にしぼんでいく。空気の抜けかけた風船のよう。みじめ。到底ヒロインなんて呼べはしない。

 通された応接まで待っていると、戸惑った様子の彼が顔をだして、最初に驚き、そしてすぐに困った顔、でも、やんわりと微笑む。

「驚いた。こんな時間に突然どうしたの?」

 まるで想像通りの展開。そのはずなのに、うまく言葉が出てこない。

「ごめんなさい。ご迷惑とは思ったんですけれど、」

 その、続きが喉の奥にひっかかる。ちがう。ちがう。こんなはずじゃ。
 からん、と靴を落とすおとがした。大事な靴。それがなくては舞踏会へ行けないの。わたしは、王子さまに。

「――――どう、したの?何かあった?」

 優しい問いかけに縋る気持ちで私はみあげた。

「きょくの、なまえを‥‥」

 口に出して、肩に置かれた指先がかすかにゆれた。わたしの感情も、ゆれる。

「曲の名前を、教えていただけないでしょうか。」

 聞くきはなかったのですが、偶々聞こえてきて。その、あんまりにも素敵な曲だったもので‥‥‥。
 何故だか言い訳がましく息を吐く間にまくし立てた。でも、目線は膝の上からはずせない。肩から離れていく彼の感触に、つられて顔を上げて、私は、後悔した。

「ごめんね、聞かせるつもりはなかったんだけれど。練習があまりできていなくて―――酷い演奏だったでしょう?」

 ふわり、微笑んでいるけれど。
 それが却って、答えるきはないのだと、教えてくれる。

「お願い。曲名だけで、いいんです。それ以上は聞きませんし、誰にもいいません、から。」

 本当は、そんなことが聞きたいんじゃない。もっと。聞きたいことがあった。
 ねぇ、どうして。私は貴方の婚約者なのに。こんなにも貴方をあいしているのに。ねぇ、何故なの?
 なぜ、私にきかせる為ではないあの曲は、あれほどまでに優しいの?わたしにささやいた、どんな声より言葉より優しく、恋を歌っていたのですか?

 あまく、あまく。夢を見るねいろ。
 恋しいあなた、と歌いかける。ただ、ひたむきに。まるで私が貴方へ呼びかける時のように。
 スマートな貴方にまるで似合わない、相手に愛を乞う。

 階段にガラスの靴を、落としてしまって泣き出しそう、なんてそんな気持ちじゃない。そもそも私はシンデレラなんかじゃないのよと。そう耳元でささやかれた。ああ騙されてバカなおんな!
 泣き出すのは私のプライドにかけて絶対に許さない。醜い笑顔でも、ずっとましだ。
 貴方を困らせてやりたくてたまらないけれど、私は馬鹿な女であったとしても醜いおんなにはなりたくない。

 セレナーデ、というんだよ。

 
 
 応えるあなたの声は、とても静か。その音がとても大切なのですね。
 貴方の心が奏でる音色は、ひどく美しかった。
 けれど、それが美しければ美しいほど、こんなにもこんなにも私の心をえぐるのです。





 

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