かくざとう を ひとつ
好きなものを好きなだけ。いっつふりーだむ。好きなものほど貶したい貶し愛がデフォ。
比率 8:2
- 2014/05/25 (Sun) |
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なんだかふっと目覚めて夢小説が読みたくなった今日この頃。
いやなんてことはない、銀魂の映画を見たら無性に甘い銀さんが見たくなっただけなんですけれど。
なんか、こう、甘い話ってたまにはいいな!って思いました。
チョコレートをつまむ感覚で。あれ、違う?
ジャンプ虹って基本当たり外れが大きいことはネウロサイトを延々と見続けた経験からわかってはいたんですが。まぁ夢小説なんて顕著ですよね。
とりあえずケータイサイトはPCだと読みにくいので手を付けられず。なかなか良いサイトも見つからず‥‥。
でもその中で、めちゃめちゃ好きな銀さんを書かれるサイトさんがありんして、鬼のようにテンションが上がりました。いや本当。
なんでかわかりませんが、「どーやったら俺とやり直してくれんの」的なセリフにはなはだもえました。長編でひと波乱あって別れたあとのマダオのセリフ。なんかたまらんもえたのです。なんでやろう。
とにかく、この作者さんは、銀さんというか銀魂が好きなんだなぁ、ってすごくすごく思いました。素敵。
とりあえず大人ずるくて、ちょっと魅力がわかりにくい銀さんは最高だと思います。結論。
好きだなぁ、って思うハナシに出会うと、自分もなんか書こうかなぁってむらむらはするのですが、いかんせん夢ってちょっと敷居が高いのでございますのよ、書くのは。とかひとりで思いつつ。
しょうがないので柚木先輩とか書いてみた。(笑
今回はちゃんと先輩×日野ちゃん。夢小説のせいか、おもいのほか甘くなりんした。
***
「先輩はどうしてわたしに話す気になったんですか?」
唐突かつ「何を」が入っていない頭の悪い問いかけにも、頭のよろしい先輩様はわたしの意図を察してくださったようだ。何を隠そう、先輩の『本性』についての話である、と。
表面上だけは、学校中の女生徒を虜にする優雅な笑みを浮かべ、けれど目元は確かにわたしをせせら笑っていた。
「急にどうしたの?日野さん。一体何のことだろう?」
わかっていてはぐらかす。意地が悪い。
たぶんこういう時は、どれだけ尋ねても答えてはくれないのだろう。残念ながらそういうことがわかってしまう程度には先輩との時間を重ねてしまった。
今日だって、半ば強引に連れ込まれた高級車の社内でふたりっきり。ファンクラブに殺されそうなシチュエーションだ。そのことにまた気が重くなり、思わずため息が漏れる。
「ごめんね、日野さん。僕はまた君の気に障ることを言ってしまったようだね。そんなため息をつかせるだなんて」
さすがです、聞き逃してはくださらないんですね先輩、なんて頭をよぎる。
言葉だけは後輩を気遣う先輩のそれだ。しかし、このセリフをただしく翻訳するのであれば、「先輩の目の前でしかもわざわざ自家用車で送って貰っている身の上で、溜息だなんていいご身分だな」というところだろう。
その手のセリフが来るのだろうとそろりと目線をあげると、先輩らしいきれいな―――白々しいほどの、完璧すぎる、微笑み。
「それとも、本当はあの後、月森君とどこかに寄る予定でもあったのかな?」
「え?」
完璧な先輩。やわらかい物腰。口調は丁寧。‥‥だけれど逆に、怖いのですが。
確かに下校時、校門までの道すがら月森君と話をしていた。けれどそこを無理やり攫ったのは貴方だった気がしますが。という素朴な疑問と、何より、わたしの交友関係についてコメントがあったことが初めてだったので、少し、驚いた。
わたしが戸惑いと、なんとなく気圧されてしまい言葉につまると、ふっと先輩の顔から表情が消える。
「ああ、いい。今のなし。気にするな、日野」
柔和なトーンと口調から打って変わって、ぞんざいな態度。ついでにがらりと雰囲気がかわり煩わしそうに足を組み頬杖を突く姿は、おそらく学校ではまず見られない姿だろう。
それでもなんとなく品が損なわれないのは、多分持って生まれたものなんだろうな、とぼんやり思った。
「えっと、確かに楽器屋を紹介してもらう話はしましたけど、今日行くって話はしてなかったですよ?」
「‥‥俺は、いい、って言わなかったかな?聞こえなかった?」
そんなことに興味はないね。とさっくり切り捨てられる。
一度はきいたくせに。なんだか理不尽だ。でもこのひとの理不尽は今に始まったことではないし、腹を立てる気にももはや慣れない今日この頃。そしてその思考回路がちょっぴり切ない今日この頃でもある。
またこぼれそうになるため息を慌てて留めて、ちいさく首を振った。わたしのそんな行動を意にも介さず先輩は、何かを楽しむそぶりをこめて、わたしを眺めた。
「しかしあの月森君を手懐けるとは、お前、思っていたよりなかなかやるね」
「手懐けるってなんですか人聞きの悪い。月森君は誤解を招きやすいタイプなだけで、もともと根はやさしいんですよ」
「ふーん?分かってます、って感じ?」
目が笑っている。何なんだろうこれ。感じが悪いです先輩。いや感じ悪いのはいつもですが。
「月森君に先輩の100分の1でも好いから社交術があればいいんですけどね」
「お前、俺のことなんだと思っているわけ?」
「本音と建前の使い分けの大ベテラン?」
「それはつまり、明日学校で俺は『日野さんが僕のことを見栄張りのウソツキと言うんだ。僕は彼女に何かしてしまったんだろうか』って物憂げに呟いたらいいということ?」
「ごめんなさいウソツキはわたくしでございます。」
だからお願いだからそれだけは勘弁してくださいっ!!
そのあたりはすでに何度か先輩の『遊び』で痛い目を見て学習済みである。その回答に満足がいったのか、ふっと口元に笑みを乗せる。いつもの優等生の微笑みではなくて、すこし、皮肉げな、多分「先輩らしい」微笑み。
「誤解をしているようだけれど、日野さん。僕は嘘はついていないよ。ただ、本音を全部口に出していないだけで。」
「でも、」
言いかけて、続きを、躊躇った。「も」の形のままの間抜けな口は、ゆっくり空気を吸い込んで、結局閉ざしてしまった。
わたしは、今、とても不味いことを言いかけた。多分。
唇の上から手をあてて、ちらりと先輩を伺うと、大変怪訝な顔をしていらっしゃった。そうですね、そうなりますよね。
なんとか微妙な間を取り除こうと、思っていたことと違うことを口に乗せる。
「…い、言い方の問題だと思いますけど」
「日野のくせに賢しいことを言うね。生意気。‥‥まぁでも、嘘を言わないのは本当。相手を騙したいのなら、100%嘘を言うのは下策だからね。騙したいのならば、飽くまで真実を語るべきだよ。理想的なのは、嘘は2割に留めること。覚えておくといい」
あ、でもお前は嘘、なんてつける性格じゃないか。
と要らんセリフを付け加えながら、先輩は言葉をしめくくる。うるさいです。どうせ正直だけが取り柄です。
少々ふてくされると、くすりと笑みが落ちる。
「先輩」
呼びかければ、目線が合う。見上げる紫紺の瞳は、とても淡泊で冷ややか。本当に、これが「あの」柚木先輩なんだろうかとおもうけれど、これが柚木先輩なのだ。
初めはひるんでいたその冷たい眼差しを、今は真っ直ぐ見つめ返すことができる。何、と問いかけるような先輩は、わたしが何も答えないと、煩わしそうにかすかに表情に険を含ませる。
「先輩、わたし、どうして先輩がわたしに話す気になったのか、どんなに考えてもやっぱりわかりませんでした。でも、それはどうだっていいんです。」
「へぇ?さっきは聞いたくせに」
からかうようにのどを鳴らして、こちらを値踏みするように眺める。優等生とは違う表情。ぞんざいな態度。何を考えているのかなんてさっぱりわからない。わたしのことをなんだと思っているのかなんて、ましてわからない。(いや玩具とかペットの類に思われているんだとは思うんだけれど)
その姿を見られてうれしいかと問われれば、うれしくない。‥‥と、最初の頃なら即答で力いっぱいに答えたけれど、今はたぶん、少し悩む。即答出来ない程度に、だけれど。
でも、即答できない程度には、わたしは。
「今の先輩といるのが楽しいから、理由なんていいのかなって」
今更以前の先輩に戻られても、怖いだけだろう。何を企んでいるのだろうかと不安になる。
それにわたしは知っている。先輩は裏表の激しいこまった人だけれど、でも。
「先輩、やっぱり優しいですし」
「‥‥」
そう言い切って、ひとりでうんうん頷くと、となりから呆れたようなため息。「本っ当にお前は、」と珍しく歯切れが悪い。ついでに心の底から呆れかえった表情も、そういえば少し珍しいかもしれない。
艶やかな黒髪をさらりとかきあげるいつもの癖、楽器を扱うひとのうつくしい指先が滑る。ああ、本当にこのひとは綺麗なひとなんだな、なんてどうでもいいことが頭をよぎった。
「さっき、本音は口に出さない、って言ったけど」
「はい?」
「お前には対しては、そこまで考えるのがばかばかしいって思うよ」
「はぁ」
「だから、さっきお前が最初に否定しかけた通り、俺はお前にだけは素直なんだぜ?」
喜べよ、日野?とでも言いたそうな完璧な微笑み。わたしは、さっき口に出しかけてやめた「不味い」ことをさらっと指摘されてしまい、絶句する。
完全に思考がフリーズしたわたしを眺め、いっそう愉快そうな笑みを深める先輩は、なんでしょうか、あれ、占い師とかそういう類でしょうか、なんでわかったんでしょうか。
そう聞きたかったけれど、口は「なな、ななな」とか言葉にならない音を出すのみで。
‥‥不味い。とってもとっても不味い。
『でも先輩は、わたしにはいつも本音で話していますよね?』
なんて。咄嗟に切り返そうとしたとか。おかしいでしょう?わたしは何を勝手に先輩のことを分かった気でいるんだか。
そんなの不味い。だって、そうであって欲しいとわたしは思っている。
先輩もお願いだから否定してほしい。月森君のことを話したみたいに、「分かってますって?ふーん」なんて、ばかにしてくれたらいいのに。
なんで笑っているんですか。なんで、肯定しちゃうんですか。なんで。
「お前は本当に、可愛いね」
なんでそんなこと言っちゃうんですか。
追い打ちのようにそんなことを言われて、顔が熱くなるのが分かった。思いっきり先輩に背を向けて窓の外を向いてみるけれど。背後でもっと楽しそうに笑われるのが分かったから、余計に悔しくなっただけだった。
了
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割と甘め感いなめない。日野ちゃんがちょっとたんぱくかなぁ。もうちょっと素直可愛い女の子でもよかったかなぁとも思いつつ。
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